眞杉 匠

2022.08.30

インタビュー

2022年7月9日、10日に行われたセカンドクォーター ラウンド5のチャンピオン眞杉匠選手。初出場ながら他を寄せ付けない走りで完全優勝を果たした決勝レースの振り返りから、S級S班への思い、プライベートのお話しまで幅広く語っていただきました。

Q

学生時代のことから聞きます。眞杉選手は、自転車競技の名門である作新学院高校(栃木県)の出身ですが、元々自転車競技や競輪に興味があったのですか?

A

県立高校に落ちてしまい母校に進学しました。自転車部に入りたくて入学する人も多いのですが、僕はそうではなく、また入学前は部の存在すら知らなかったです。

Q

自転車競技をやりたくて入学したわけではない中で、自転車競技部の厳しい練習を耐えられたモチベーションは何だったのですか?

A

僕は車やバイクが好きで、当時から乗り物に興味を持っていました。その点では自転車も乗り物ですし、パーツを変えてみたり、そんな部分が自分にハマって、部活を楽しく続けられたんだと思います。

Q

作新学院は、当時から自転車競技の強豪校ですよね?

A

僕の一つ下の学年は強かったですよ。幸田光博さん(67期)の息子の望夢(115期)や福田滉(115期)ら良い選手が多く、目立っていました。僕は国体でギリギリ入賞の経験しかなく、インターハイも予選落ちと悔しい結果が多かったです。

Q

入学当初はポイントレースなど、中長距離種目がメインだったとのことですが、短距離の種目は全くやっていなかったのですか。

A

スクラッチとポイントレースをやっていたのですが、全国大会では予選落ちでした。短距離は全く経験しておらず、競輪学校(現・日本競輪選手養成所)の入学試験では200mのタイムも下から数えた方が早かったと思います。最近は受験生のタイムが上がっていっているので、今だったら受かっていないと思います(笑)。

Q

7位入賞した2016年の岩手国体は、短距離種目である1kmTTに出場。こちらのきっかけは何だったのですか?

A

競輪学校の試験直前で、レースで落車などがあると試験を受けられなることが懸念でした。そこで試験内容にも1kmTTが含まれることから出場しました。ちなみに元々のタイムは1分10秒くらいだったと思います。

Q

スポーツで食べていくというのは、大きな決断だと感じます。高校卒業後、競輪選手以外の道は考えなかったですか?

A

最初は大学に進学するつもりでしたが、進学した先輩から「大学は自主練が多い」という話を聞き、僕はその環境で過ごしてからだと競輪学校に受からないと思って、高卒で選手になることを決意しました。入学後の1年間は合宿のような気持ちでした(笑)。でも自転車が好きだったので、部活をそのまま仕事にした感じです。

Q

高校時代の自転車競技の同期や先輩、後輩とは今でも連絡を取り合ってますか?

A

森田優弥(埼玉・113期)、樋口開土さん(東京・113期)と合宿をすることもあり、頻繁にやり取りしています。

Q

2018年7月に競輪選手デビューをしてから5年目で、特に今年は目覚ましい活躍をされています。当時を振り返っていかがですか?

A

2019年にチャレンジからA級2班へと特別昇進したときも、「特進しちゃったよ」という驚きの気持ちでした。その年、S級に昇進後すぐのレースでも9着が続き、「S級じゃ勝てないのかな」と思うこともあり、すぐにA級に落ちるんじゃないかと不安だったことを覚えています。

Q

眞杉選手がそのような壁にぶつかった際、先輩から「今のスタイルを変えずに行った方がいい」とアドバイスがあったそうですね。

A

そのことも大切にしています。加えてデビュー当初に、2カ月おきに3回ほど落車をしてしまったことがあります。そこで「落車したくないから先行しよう」と考え、先行するようになったことも壁を乗り越えられた要因の一つだと思います。

Q

ラインの先頭を走る機会が多い眞杉選手は単騎戦に強く、PIST6のレースにも合っているような気がします。ご自身ではどう考えられていますか?

A

後ろに他の選手を連れている時は、自分がダメだと巻き込んでしまいます。でも単騎戦やPIST6はそれがないので気持ちの面で楽です。「道連れにしてはいけない」と焦ってしまい、捲りが不発になることもありますが、単騎では「ダメでもどうせ自分だけだし」ととらえると、行けるんですよね。不思議です(笑)。

Q

今年は名古屋競輪場、小松島競輪場で行われたGⅢをそれぞれ制覇し、PIST6も初出場で完全優勝と躍進の年となっています。ご自身が考える強さの秘訣はなんですか。

A

GIを走ると「自分はまだまだだな」と思っています。なんとか勝ち上がれている感じです。勝つために大切にしているのが、去年よりも積極的に動くことを意識すること。その成果で競争得点もレース内容も良くなってきましたね。

Q

10年目までの次の5年では、競輪選手として何を目標とされますか?

A

年々レベルアップをしていきたいです。今年5月に行われた日本選手権競輪でGIの決勝に上がったので、次は優勝を目指したいです。でも実際にGIを走ってみると、「かなり厚い壁があるな」と感じます。やはりGIの決勝となると、平然と捲られてしまいますし、自分の調子をベストにもっていかないと勝負は難しいですね。

Q

上には強い先輩がたくさんいて、さらに下からは力のある選手が上がってくる。本当に厳しい世界ですよね。

A

そうですね。S級S班の方々はどう調整しているんだろうと思います。調子が良くない時でも勝っていますし、すごいの一言です。

Q

関東のS級S班の先輩には、平原康多選手(埼玉・87期)がいます。相談することはありますか?

A

アドバイスをもらいに行きますね。玉野競輪場で行われたサマーナイトフェスティバル(7/16~7/18)前から、ずっと感じがあまり良くなかったんです。開催中に先行していても、上手く脚を回せていなく、もう一加速ができていないような感覚でした。そこで平原さんに、「後ろについていてどうですか?」と聞き、助言をもらったりしていました。ただ、ここ最近の調子の悪さは夏バテしてるんですかね(笑)。高松宮記念杯(6/16~6/19)くらいから、調子が良いとは言えないんです。

Q

レベルアップの先には、競輪界最高峰の「S級S班」があるかと思います。そこへの思いは?

A

まだ、かなり遠いとは思うのですが、狙っていきたいです。

Q

PIST6についてです。初参戦にあたり、練習スタイルなどPIST6に向けて調整した部分はありますか?

A

正直、PIST6に向けた練習は何もやっていなかったです。カーボンも去年11月の地区プロ(自転車競技大会)で使った後、そこから使っていなくて。ただ、同じギア倍数でも250mバンクと宇都宮の500mバンクだと感じ方も全く違うので、少しだけ大ギアの練習はしました。

Q

レース後のインタビューで「ほこりをかぶっていたフレームをきれいにしてきた」と言っていましたが、本当だったんですね(笑)。

A

そうです(笑)。約半年くらい使っていなかったので(笑)。

Q

これまで250mバンクを走られた経験はあったのですか?

A

ほぼないですね。高校生の時に3日間くらい走っただけです。当時は伊豆ベロドロームで行われる大会には出ていなかったので。後は、競輪学校の時に少し走ったくらいでしょうか。

Q

1次予選から、同期の黒沢征治選手(埼玉・113期)や小松島のGⅢ決勝で対戦したばかりの志智俊夫選手(岐阜・70期)らがいる中、どんな心境で戦いましたか?

A

同期は一緒に走りたくないですね(笑)。やり合ってしまうというか、普段しないようなレースになってしまいますし…。よく一緒に練習もしている上に、仲が良いのでやりにくいです。あと志智さんは小松島で差されそうだったので、今回も逃げ切れるようにと考えていました。

Q

2日目からギアを5.00に上げています。これは決勝で戦うであろう山田義彦選手(埼玉・92期)など大ギアの選手を見据えての調整だったのですか?

A

山田さんは5.67のギア倍数で、自分と1倍くらい違ったので、それでは話にならないと思って上げました。ただギアを持っていなかったので、売店に売っていた1番大きいギアを買って付けました。

Q

その場で購入されたということは、そのギア倍数では一度も練習されていなかったということですよね。

A

初日は4.69のギア倍数で走ったんですが、250mバンクですし、フレームはカーボンで車輪もディスクということもあり、駆けてもそこまで負荷がない感覚でした。そこでギアを5.0にあげても行けそうだと判断しました。

Q

初戦の勢いそのままに決勝進出。入場シーンでは自信にあふれた表情を浮かべていました。どんな気持ちで入場されましたか?

A

自信はそこまであったわけではないのですが、「楽しもう」と思ってバンクに立ちました。

Q

残り1周半くらいから、後方の山田選手の動きをかなり意識されていたように見えました。やはり最も警戒していたのは、優勝2度の山田選手でしたか?

A

山田さんもですが根田空史さん(千葉・94期)も強いですし、注意していました。ただ何よりも僕自身が走り方をよく分かっていなかったですね。3番手か4番手くらいのスタートポジションが良いとは聞いていたのですが、先頭になってしまったので、とりあえずは誰かが上がって来てから考えようと思っていました。結果として、いいポジションをキープできました。

Q

では、眞杉選手にとって、残り3周のタイミングで志智選手と神田龍選手(三重・105期)が前に来たのはラッキーでしたか?

A

2人とも良い感じに駆けてくれていましたし、良かったですね。

Q

決勝1位でのゴール後は笑顔でガッツポーズをされてました。初出場初優勝の味を教えてください。

A

素直にうれしかったです。同県のカミタクさん(神山拓弥選手・91期)は3回も優勝してますよね。既存競輪では追い込み選手なのに、PIST6では先行して逃げ切ってしまうので、もし自分がここで優勝できなかったら何か言われるなと思い、その緊張もありました(笑)。雨谷一樹さん(栃木・96期)も3度の頂点があり、同じ栃木勢としてプレッシャーはありました。

Q

今回使用されたアルゴン18はご自身のものですか?また高校時代も同じメーカーのものですか?

A

僕の機材です。高校時代はボーマとブリヂストンのアンカーに乗ってましたね。

Q

高校時代のカーボンフレームと比べて、アルゴン18の乗り心地は?

A

高校時代はセッティングのセの字も分からないような感じで、サドルが高くハンドルが低ければ良いと思っていたので、比較にならないと思うのですが(笑)。ただ既存競輪で乗っている鉄フレームに比べると、進み具合がすごくいいですね。

Q

PIST6で使用されたカーボンフレームと既存競輪の鉄フレームでは、硬さやしなり具合、踏み込みの感覚など、違いがあると思います。その辺りの切り替えは難しかったですか?

A

ギアが全然違うという部分もあると思うのですが、カーボンの方が硬く、ギアも大きい分体へのダメージが大きい気がしました。1回でも結構脚にガツンとくる感じだったのですが、PIST6はさらに1日2走なので…

Q

眞杉選手のプライベートについても質問させてください。あまり私生活が見えてこない印象なのですが、オフの過ごし方を教えてください。

A

アウトドアが好きなので、ドライブに行ったりします。ジェットスキーも好きで、この間も行きました!地元の友達や後輩、選手同士で行くことが多いです。

Q

眞杉選手のTwitterのヘッダー画像はスノボですよね?

A

冬はスノボ、夏はジェットです(笑)。

Q

アウトドア以外でハマっているもの、好きなことはありますか?高校時代はゲームセンターにハマっていたと聞きました。

A

あまり家にいたくなくて、お出かけしたいタイプなので映画を見に行くことですかね。最近はマーベルの「ソー:ラブ&サンダー」を見ました。面白かったですよ!見た方が良いです(笑)。

ゲームセンターは小さい時から好きで、今も好きです(笑)。遠征の時に前泊する場合は、時間があれば行ったりします。

Q

高校時代、部活の練習も結構さぼってゲームセンターに行かれていたというのは本当ですか?

A

高校の時は、監督が厳しかったのでサボっていないですよ!自主練はしていなかったですが(笑)。

Q

最後に、眞杉選手の活躍を楽しみにしているファンのみなさんに、メッセージをお願いします!

A

今年、S級S班を目指して頑張ります!PIST6もカミタクさんの優勝3回を超えられるよう、頑張るので応援をお願いします!