PIST6 Championshipの裏側 スタート編
2022.08.09
2021年10月に産声を上げたPIST6 Championship。選手たちが熱戦を繰り広げる舞台裏では、円滑なレース運営に向けて日夜奮闘する人々がいる。スタートの瞬間は、選手にとってもファンにとっても緊張の一瞬であり、ホルダー(発走補助員)が選手を支え、発走合図員の号砲の音とともに6周のドラマが始まっていく。レーススタートの裏側に迫った。
「横持ち」で安定・安全に ホルダー
スタート位置についた選手は、号砲の瞬間までホルダーに支えられながら発走を待つ。このスタート方式のことを「ホルダースタート」といい、自転車競技ではメジャーな方式となっている。既存競輪では発走機が導入されており、号砲まで自転車は固定された状態になる。一方のPIST6は、自転車競技に準ずる形で人の手によって発走していく。
選手の支え方にも特徴があり、サドルとハンドルに手を添える「横持ち」である。これは急角度を考慮した結果で、国内の競技会で多いサドルや後輪のみを持つスタイルでは、バランスを崩す危険性があることから採用。選手にとっても上体を起こし、リラックスした状態で号砲を待つことができる。
ホルダーにとって、最も気をつかうのが真っ直ぐに持つことだ。少しでも傾いてしまうと、選手が姿勢を保つために踏ん張らなくてはならず、余計な力を使わせてしまう。またスタートの瞬間は、選手が真っ直ぐに走り出せるように心がける。選手同士の間隔は狭く、斜めの走行が接触につながる可能性もある。そこで斜めの力が加わらないよう、動きに注意しながら手を離す。スタート前の選手の高揚感を感じながら、ホルダーは冷静に号砲のときへと準備を進める。
選手に応じて号砲の瞬間、微調整 発走合図員
レーススタートの合図となる号砲を鳴らす発走合図員。選手のユニフォームは正しいか、自転車に不具合はないか、選手は正しく整列できているかなど、その役割は号砲のみならず幅広い。いわば競技運営におけるバンク上の司令塔といっても過言ではない。
中でもより緊張が高まる場面が、号砲を鳴らす瞬間である。フィニッシュラインの手前20m付近をペーサーが通過したところで競技用ピストルの引き金を引くが、そのタイミングは出走メンバーの状況を見つつ微調整する。例えばスタート時により負荷がかかる大ギアの選手がいる時は、内側に切り込んでくるリスクもあり、タイミングをわずかにずらすといった細かな配慮がなされている。
スタートの合図となるため、号砲を放てばタイム計測も始まる。暴発などミスがあれば再発走となるため、競技用ピストルの引き金に手を当てるのも鳴らす直前。一瞬の気の緩みも許されない世界に、「完璧に遂行しなくてはならず、今も修行中。でも本当にやりがいを感じる」と、発走合図員を務めるスタッフは話す。熱戦の始まりは、各スタッフが細心の注意を払ってその瞬間を迎えている。