PIST6 Championshipの裏側 検車編
2022.08.03
2021年10月に産声を上げたPIST6 Championship。選手たちが熱戦を繰り広げる舞台裏では、円滑なレース運営に向けて日夜奮闘する人々がいる。自転車は選手にとって「相棒」と言うべき存在。競技実施において、自転車関連の業務を担当するのが「検車」である。選手の安全走行を支える検車員たちの仕事の裏側に迫った。
安全を支える4つの役割
検車には大きく分けて、検査、点検、整備、管理と4つの役割がある。検査は自転車がルールに則ったものになっているかをチェック。点検はレースの直前直後に自転車に不備がないかを確かめ、整備は選手から「機材の調子がイマイチ」など相談を受けると対応する。開催中、選手の自転車は検車員に委ねられることから預かりや保管のことを管理という。
業務において、特に気にかける点は自転車に不備がないか。万が一不具合のある車体で走行した場合、事故を起こして命を落とす危険性もある。公正かつ安全、さらには最悪の事態を防ぐ観点からも、開催中は念入りに自転車を確認する。ネジの緩み一つでも許されない。細部まで丁寧に一つ一つ見ていくことが、レースの安全性を高めている。
自転車をチェックする回数は複数回にわたる。検査は開催前日に行うほか、レースが行われる当日も連日午前10時から検査が行われる。サドルの取り付けに問題がないか、ネジを締める圧力は規定通りかなどを見てまわる。またレース前にも選手が本番に備えて待機をしているタイミングで点検を行い、帰ってきてからも故障が発生していないかなど確認する。
検車員にも未知だったカーボンの世界
既存競輪では鉄製フレームの自転車を使い、PIST6 Championshipではカーボンフレームに乗る。2つの仕様は異なり、カーボンフレームに乗ってレースをする機会も限られる。選手にカーボンへの理解を深めてもらうため、コミュニケーションを図ることも検車員の役割の一つとなっている。
検車員にとってもカーボンは未知なる世界だった。鉄製フレームは規格も決まっており、業務に使う工具もシンプル。一方のカーボンフレームは空力抵抗を抑えるようにつくられており専門性が高く、かつ高価で市中には出回ってないものがバンクを疾走している。検車に向けた知識を深めるにも苦労があり、メーカーの資料を読み漁って得た情報をスタッフ同士で共有してきた。
検査を合格させることが求められる反面、ルールに対して妥協は許されないという側面も持つ検車。検車員の一人は、「選手が無事にレースを走り終えて笑顔で帰っていただくこと、選手の機材への理解が深まることが仕事の成果であり、やりがいだと感じます」。レースの安全は、検車員の細やかな目にも支えられている。