PIST6 Championship機材徹底解剖 ギア編
2022.06.03
PIST6 Championshipにおいて、選手たちの「相棒」と言える存在がピストバイクである。時に時速70kmを出す機材にはどんな秘密が隠されているのか。今回はレースの際、選手同士の「駆け引き」の材料ともなるギアについて紐解いていく。
脚への負担大の重いギア、細かい速度調節効く軽いギア
ギアとは自転車のクランク(ペダルがついている棒)と後輪についている歯車のこと。ピストバイクにおける大きな特徴は、変速機がついていない固定ギアであること。固定ギアの特徴はクランクと後輪が完全に連動しており、足を止めてしまうと車輪は回らなくなる。原理は一輪車と同じく、前に漕げば前に進み、後ろに漕げば後ろへと進む。
変速機がついていないことで、その場の状況に応じて走りながら、ギアを変えることはできない。そのためスタート前から対戦相手などを見つつ、「自分はどんなレースを展開しようか」と考え、ギア比を決める。ギア比の出し方は、前のギアの歯数÷後ろのギアの歯数。ギア比5.00という場合、前が「60」後ろが「12」など前後の組み合わせで算出される。5.00の場合、クランクが一回転した際に後輪が5回転することを表し、ギア比が高いほどその回転数は増える。
同じレースのメンバーでも5倍台中盤のギア比で挑む選手もいれば、4倍台前半にする選手もいる。重いギア比にすると、同じ速度でクランクを回す場合は距離が伸びるものの、脚への負担は大きく、加えて同じ速度で回せないとその効果は少ない。一方軽いものにすると、ひと踏みの距離は伸びないが、体への負担は少なく、細かい速度調節にも対応ができる。
ギア比に存在する選手同士の「駆け引き」
ギア比4.00でも「52」と「13」もあれば、「48」と「12」とするパターンもあり、同じギア比でも前後の違いで踏んだ際の感覚には違いが存在する。大きいギア同士では足に当たる感覚が、少し柔らかくなることから持続力を求める選手が好み、小さいギアの場合はダイレクト感があることから、ダッシュ系の選手が組み合わせる傾向にある。
ギア比が大きいと、ハマれば周囲が太刀打ち出来ないスピードを生む。それを実現させるために不可欠なのがペダリングの技術だ。がむしゃらさだけでは結果はついてこず、どのタイミングで、どれだけの力やどの角度で踏むかを計算しなくては、使いこなせない。加えて安定した走行には、上半身の体幹なども関わることから、セッティング、技術、体のバランスなど総合力が問われる。
何気なく目にする「ギア変更」の言葉。ギア比は自身の走りを左右する部分があり、変えるからには何らかの意図がある。他のメンバーとの兼ね合い、そこで想像したレース展開、さらには自身との相性。そんな「駆け引き」を思い描きながら、レースを楽しむのも一つの方法だ。
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